柴田教授のひびきの放送局/Prof. Shibata's Hibikino Station

九州工業大学大学院生命体工学研究科の柴田智広教授の公式ブログです.

爲井智也 博士 (奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科 助教)

 

今回は, Nf:id:tshibata:20140625163339j:plainAISTの修士・博士と指導し,私の研究員を経たのち,今年の4月に助教に着任した爲井博士が手記を寄せてくれました.実は論理生命学講座(現数理情報学研究室)は当初希望の研究室ではなかったそうですが,「人間について知りたい」と語る私の下で研究をしてみたくなったのだそうです.さらに当初は博士課程への進学など考えていなかったそうですが,私の人間‐ロボット協調系研究は,爲井さんの成長とともに発展しました.博士号取得後も,私のこれまでの科研費基盤研究やインド とのJST戦略的国際科学技術協力推進事業にも大変貢献してくれました.

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 1.大学院でどんな研究をしたか

 学部では機械工学を専攻していましたが、機械について学ぶうちに、複雑で精妙な動きを何気なく実現している人間の身体やスキルに興味を持つようになりました。
 修士課程では「脱力」に着目したピアノの打鍵動作の スキルの定量化、支援システムの開発を目標に研究を進めました。 スポーツなどで「力を抜きなさい」「脱力しなさい」と指導されるのを経験した人も多いと思います。ピアノ演奏においても、素早く精妙な指の動きを実現するために、あるいは伸び・響きのある音を出し豊かな表現を可能にするためには「脱力」した奏法が重要性であると言われています。研究では,指が離鍵する際の伸筋の活性度と離鍵速度に強い相関を見つけました.
 博士課程では修士課程時代に培った生体情報計測・解析のスキルと経験を活か し、ユーザの生体情報に基づくヒューマン‐ロボットインタラクション(HRI)の 研究に取り組みました。また、時間的に変化し得るユーザの状態に対応するため、強化学習という機械学習の手法をHRIに取り入れる手法を提案しました。物理的な接触を伴うHRIに強化学習を用いるこの枠組みは、大林博士との適応的支援を行うダーツトレーナーの開発研究へと繋がっていきました。

 

2. 今後の展望

 近年、柴田先生が力を入れている高齢者や疾患を持つ方々のQOL向上を目指す研 究には、情報通信技術が貢献できる余地が非常に多く存在します。これからの世の中の役に立つ非常にやりがいがある研究だと思います。これまでも着衣支援ロ ボットやKinectを用いた在宅リハビリ支援システムの開発に関わってきましたが、介護・支援する側の人間のスキルの定量化、ロボットなどの機械への実装に貢献していきたいと思います。
 現在では,柴田先生の長年の尽力もあって,医学・福祉関係者の方々と強力な連携が築けています。スマートライフケア関連などの応用研究は、現場を知る方々との議論を通して本当に役に立てるものを目指していきたいと思います。一方、私たちの数理情報学研究室では最先端の統計、 機械学習といった数理、さらには計測機器に関する知識も豊富です。これらを応 用することで現場の方々が考えるよりも、さらに良い機能を提供できる可能性も 大いにあり得ます。産学連携におけるニーズとシーズ、両面の思考を持った学生を育てていきたいと思います。

 

3.九工大の卒研生や大学院生へのメッセージ

 研究を進めていくためには、また研究をより面白く思えるためには、"気づき"の 力が大切だとよく感じます。一見全く異なるドメインの研究と自分の研究に共通する点に気づいたり、実験データから面白い傾向に気づいたり、より効率的な方 法を思いついたり。この力を鍛えるためには普段から、自分の研究についても他人の研究についても「このやり方が本当にいいのか」「何故いいのか」「他の研究にも使えないか」と、深く掘り下げて考える習慣が大切だと思います。先生の言葉も鵜呑みにするのではなく、時には疑いながら自分で咀嚼するよう努めていってほしいと思います。

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 爲井博士には,今年度も私の科研費基盤研究の分担研究者を務めてもらっています.また,一緒に奈良で育てたスマートライフケア・コミュニティを,奈良でしっかり維持発展させていってくれることでしょう.私も北九州でのコミュニティ作りを着実に進めており,いずれ奈良・北九州合同のワークショップが開催できる日が来るかもしれないと楽しみにしています.