柴田教授のひびきの放送局/Prof. Shibata's Hibikino Station

九州工業大学大学院生命体工学研究科の柴田智広教授の公式ブログです.

大林千尋 博士(沼津高等専門学校 電子制御工学科 助教)

f:id:tshibata:20140328122220j:plain

今回はNAIST修士・博士と指導し,私の研究員を経たのち,今年の4月に沼津高等専門学校 電子制御工学科の助教に着任した大林博士が手記を寄せてくれました.寡黙なのですが熱いものを内部にもっていて,健常者の運動学習を強化学習エージェントで支援し加速する,というとても難しい融合領域研究をなんとかやり遂げてくれました.また,今年1月から3か月間は九工大に研究員としてついてきてくれ,柴田研の円滑な立ち上げに大いに力を貸してくれました.

- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

1.大学院でどんな研究をしたか

 柴田先生の下で,ダーツ投げ学習を題材として,強化学習法によりユーザー適応的に学習を支援してくれるロボットトレーナーの研究に取り組みました.この発端は,ロボットを作るだけの工学研究ではなく,ヒトの研究も含む科学研究に憧れていたこと,人がロボットに動きを教えるのではなく,ロボットが個人個人に合わせて適切な教え方で動きを教えるというチャレンジングな課題に惹かれたことです.

 修士課程では,ダーツ投げの熟練度を表す指標を調査するために,まず熟達者と非熟達者の動作比較を行いました.ダーツ投げ熟練者の動作を検討した結果,熟練者は体幹や上腕をほぼ固定し,リラックスして前腕で投げているということがわかりました.結果として,ダーツ投げスコアと投げ動作中の肩や肘の位置変化量に強い相関を見つけました.この結果に基づいて,為井博士がHRIとして提案した強化学習エージェントの枠組み*1をダーツ投げ学習支援用のロボットトレーナへと拡張していきました.

博士課程では,健康でダーツに不慣れな成人男女によるダーツ投げの行動実験を実施し,その訓練効果の評価に取り組みました.提案手法を含め4つの方法の効果を比較したところ,提案したロボットトレーナのみが他の手法よりもスコアの上昇率を有意に高めることができました*2

 モーションキャプチャ部-ロボット制御部-ダーツスコア自動判定部―強化学習各部の構築と統合から,実験計画-被験者募集-実験実施-実験データの後処理と分析,そして国際会議発表やジャーナル論文化と,本当に大変でしたが得難い経験を積むことができました.

 

2.今後の展望

現在は沼津高専にて,若いエンジニアの育成に励んでいます.高専も時代に合わせて変わっており,沼津高専では,旧来型の機械,電気,情報や物質分野のいずれかに秀でただけの技術者ではなく,いずれかに秀でた上で幅広い分野にも知識があり応用力のある技術者の育成に取り組んでいます.今後はこれまで大学院で学んだ統計処理や機械学習を講義や実験に盛り込み,企業でも大学院でも通用する技術者の育成に努めたいと思います.また沼津高専には大学院時代に利用したものと同型のモーションキャプチャ環境もあり,大学院の研究で培ったヒトの運動計測解析のノウハウを活かし,技能学習支援の研究やチームエンジニアリングの教育研究を極めようと考えています.また,産学連携にも貢献していきたいと思います.

 

3.九工大の卒研生や院生へのメッセージ

 柴田研では,運動学習支援や社会的知能と言った融合領域であり最先端の研究を推進されており,社会的にも技術的にもチャレンジングな課題をやらせてもらえます.「我こそは」という学生さんは,是非,研究のアイデアを柴田先生にプレゼンしたり,具体的にスクラッチしたものを提示したりと,積極的にアピールすると刺激的なお話や有益な可能性を示唆してくれると思います.

- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

大林博士は熊本電波高専(現熊本高専)出身なので,新しい職場にもすぐに溶け込んで,上記メッセージ中のような方向性できっと活躍してくれることでしょう.ハードもソフトもIoTも一般個人レベルで価値あるものを製作・作成できる時代になりました.教育方法も能動学習や反転授業など,新しい試みがなされています.大林博士も,基礎は押さえつつも,ぜひ常に新しい教育・研究方法を試みていって欲しいものです.