柴田教授のひびきの放送局 (Prof. Shibata's Blog)

九州工業大学大学院生命体工学研究科の柴田智広教授の公式ブログです (Official Blog of Prof. Shibata)

第38回日本ロボット学会学術講演会にて2つの賞を受賞しました

コロナ禍のため現在オンラインで開催中の、第38回日本ロボット学会学術講演会にて、柴田研究室では2つの賞を受賞することができました。論文査読や、賞の選考に関わっていただいたすべての皆様に心より御礼申し上げます。

1.Advanced Robotics Excellent Paper Award 
  日本ロボット学会が出版する欧文誌 Advanced Roboticsに2019年に出版した下記論文が、第8回 Advanced Robotics Excellent Paper Awadを受賞しました。
   Joshi, R.P., Koganti, N.,Shibata, T.
   A Framework for Robotic Clothing Assistance by Imitation Learning
   Advanced Robotics, 33(22),pp.1-19, 2019
           https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/01691864.2019.1636715
       

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賞状

 

公式授賞動画 (3:43-)

 

2.第2回International Session Best Presentation Award
  今回の第38回日本ロボット学会学術講演会の初日に開催された、International Sessionでの、 Raul Duran Jimenez君の研究発表が、Best Presentation Awardを受賞しました。予稿情報は下記のようです。
    Duran J., R. A., Matsumura, N., Shibata, T. (Kyushu Institute of Technology)
               A Study on a Low-Cost Soft Robotic Hand Grip Operated by a Smart Skin

    第38回日本ロボット学会学術講演会予稿集, RSJ2020AC1I2-02, 4 pages, 2020.

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賞状
公式授賞動画

 

柴田研のYouTube Channelにある関連動画

 

今後も、受賞を励みに研究、開発、社会実装頑張ります!

「認知症問題にテクノロジーが想い出とできること」と題したワークショップを開催しました

先月末に、⽂部科学省地域イノベーション・エコシステム形成プログラムが主催し、九工大イノベーション推進機構戦略研究ユニット「スマートライフケア社会創造ユニット」が協賛して、「認知症問題にテクノロジーが想い出とできること」というタイトルでZoomを用いたオンラインワークショップを開催しました。

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オンラインワークショップの様子

ワークショップには、福岡県内だけでなく、栃木県、東京都、神奈川県、京都府長崎県、宮崎県からも参加者ご参加いただき、また、活発な質疑応答も行われ、このテーマに対する社会の関心の高さを再確認することができました。パネルディスカッションでは、北九州市認知症支援・介護予防センターの柿添氏と地域イノベーション・エコシステム形成プロジェクトのメンバーも参加し、認知症の改善や予防に関する、共想法や音楽療法の社会実装の進め方について活発な議論がなされました。

ワークショップ終了後も、関係者で社会実装のための具体的議論進んでいます。本ワークショップが契機となって、新しい取り組みが始まることを期待しています。

最後になりますが、講師の先生方、北九州市の柿添様、また全国からご参加いただいた皆様に、改めて御礼申し上げます。

 

 

産業医科大学との共同研究論文が出版されました

先日、柴田研から、広島大学産業医科大学との共同研究論文を出版することができました。

Effects of Gait Inducing Assist for Patients with Parkinson’s Disease on Double Support Phase During Gait
邦題:パーキンソン病患者を対象とした歩行誘発的アシストが歩行時の両脚支持期に与える影響

本研究では、パーキンソン病患者の半数が悩まされているというすくみ足の抑制に必要と考えられる歩行改善を目的として、歩行誘発的アシストを行う空気圧人工筋を用いた支援システムを開発し、5名の被験者(パーキンソン病患者)を対象にその有効性を検証したものです。
装置開発の動機、設計コンセプト、および実験の一例、はこの動画を見てください。 
健常者装着時の様子は、この動画を見て下さい。 


ところで、知らない方も多いかと思いますが、産業医科大学は、全国で唯一の産業医を育成する大学で、英教育誌タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)が9月の2日に発表した今年の世界大学ランキングで、評価基準の一つ「論文引用」で世界1位になったそうです。私の所属する、九州工業大学大学院生命体工学研究科から産業医科大学までは、車で10分かからないところにあるため、医学部の無い本学としてはとてもありがたい存在です。

なお、北九州市について、人口10万人あたりの病床数は、病院、一般診療所とも第2位なんです。

91も病院があるそうです。この地の利を、もっと研究に反映させる必要を感じています。

 

 

着衣介助ロボットシステムに電動車椅子WHILLも活用しています

2020年8月25日(火)のガイアの夜明けで、電動車椅子のWHILLがだいぶフィーチャーされていましたね。

柴田研究室は、着衣介助ロボットHAFY(Helping Arms For You)を研究しており、2019年の国際ロボット展(IREX2019)に出展した時には、同じテレビ東京ワールドビジネスサテライト(WBS)のトレたまで取り上げていただきました。

HAFYは動けないので、着衣が必要な人を載せて動けるWHILL(Model CR)と協調して着衣介助を遂行します。

この協調制御について、2020年6月に開催された13th International Conference on Human System Interactionで下記論文を発表したところ、Best Paper Awrd Finalistsを受賞することができました。

Ravi P. Joshi, Jayant P. Tarapure, Tomohiro Shibata
Electric Wheelchair–Humanoid Robot Collaboration for Clothing Assistance of the Elderly


今後は、遠くからWHILLが人をHAFYのところまで連れてきてくれるところも拡充できれば、と考えています。


ちなみに、私は大学院時代はHyper Scooterという視覚移動ロボットの研究をしていたので、ガイアの夜明けでのWHILLの苦闘を見て、当時の研究を懐かしく思い出しました。

・Hyper Scooter: a mobile robot sharing visual information with a human
 https://ieeexplore.ieee.org/abstract/document/525424
・Development and integration of generic components for a teachable vision-based mobile robot
 https://ieeexplore.ieee.org/abstract/document/537045

 

歩行器をうまく使うと、要介護度を維持できる可能性が高くなる

歩行器が使いにくく感じてきて、車椅子も使おうかなあと思っていらっしゃる方もいらっしゃると思います。

また、入居者の転倒が怖いので、なるべく車椅子を使ってほしいと考える介護職の方も多いのではないか、と思います。

 

そのような方々に、ぜひ知っておいてほしい情報があります。
下記、産業技術総合研究所 生活機能ロボティクス研究チームの松本チーム長からいただいた資料の一部で、介護給付費実態調査の二次利用申請を厚生労働省に行い、許可を得た上で、全国規模の介護保険レセプトデータ(約1千万人分)の電子データを入手し、解析した結果です。

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福祉機器未利用者に比べて、歩行器の長期利用者は要介護度が悪化しにくい

上のグラフから同じ要介護度2の人でも、歩行器の長期利用者は、福祉機器未利用者に比べて、要介護度が悪化しにくく、利用期間が長いほど差が広がることが分かります。

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車椅子に比べて、歩行器の長期利用者は要介護度が悪化しにくい

上のグラフから同じ要介護度2の人でも、歩行器の長期利用者は、車椅子利用者に比べて、要介護度が悪化しにくいことが分かります。

 

これまでのグラフは、個人を追跡調査した結果ではありません。2007~2011年度に要介護2(在宅)で歩行器を利用開始し、半年以上利用した全国の高齢者全員を追跡した結果が下記のグラフです。

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歩行器の利用経験がある高齢者は、5年後(60か月後)の入院率が低く(0.76倍)、在宅率が高い(1.29倍)。また、要介護度(開始時に要介護2)を維持できている割合も高い(1.15倍)ことが分かります。

 

以上の結果をまとめると、要介護度2の方が歩行器をうまく使うと、要介護度を維持できる可能性が高くなり、より長く在宅でいられる可能性が高くなる、ということです。

また、車椅子を長期的に使うことは、避けられるならば避けたほうがよさそうです。

歩くって大事、ということが全国約1千万人の大規模データ解析で裏打ちされたということですね。

 

最後に、貴重な解析を行い資料を提供いただいた、松本チーム長をはじめとする、産業技術総合研究所 生活機能ロボティクス研究チームの皆様に感謝申し上げます。

<参考文献>

松本吉央, 本間敬子, 梶谷勇, 金雪瑩, 田宮菜奈子,
"介護保険レセプトを用いた福祉機器の利用状況の分析 -歩行器利用者の分析-",
第25回ロボティクスシンポジア, 2020年3月16日, Covid-19のためオンライン開催

 

 

Qワードおぼえうた

NHK教育の「子どものための哲学」という番組、知ってますか?
妻が子供に見せていたり、「死んだらどうなるの?」の回の書籍を子供(幼児)に読みきかせたりしていたので、私も知ることになりました。小学生向け番組なので、幼児はちょっと早いんじゃないの、と思ったけど、昨年この子にとっての曾祖母が亡くなったし、夏には昆虫の死骸もたくさん見るし、ママが僕より先に死んじゃうんだよね、と発言していたりしていたので、悪くないタイミングだと思い直しました。

ところで、「Qワードおぼえうた」で伝えている内容は、大学院生など研究の初学者には必見だと思って、実に感心したので、ここで紹介しておきます。

下記公式動画の、10分18秒あたりから見てください。


Qワードおぼえうたは、アイデア発想法とも見て取れます。
最近twitterで目についた、MITのRamesh Raskar先生のIdea Hexagonも
ついでに貼っておきます。

 スライドはこちら(74枚!?)。

 

NHK教育には、考えるカラスとか、ふしぎエンドレスとか、科学的思考を育てる素晴らしい番組があるのですが、この子供のための哲学も素晴らしい。

を見ると、20作品が載っています。うたは他にもありますね

 

米国の神経補装具研究の進展

2020.7.10に、ユタ大学がFDAから、先進的な神経補装具を在宅でテストするための、Early Feasibility Study Investigational Device Exemption study の承認を得たそうです。

こんな研究ができて素晴らしい、羨ましいと思う反面、電子機器を安定して長期に生体内に設置できるのか心配になります。

 

思い起こせば、2006年のこの研究には驚愕しました。

その後この被験者がどうなったのか知らないので、調べなくては。どこかに侵襲BCI研究の追跡調査がまとめられていないか、探しています。

 

そして今後は、Elon Musk氏が作ったNeurallink corp.のNeurallinkもちゃんとwatchしてみよう。

note.com