私が博士号取得後、JST ERATO川人学習動態脳プロジェクトの研究者になった頃に、母がパーキンソン病に罹患したため、奈良に呼び寄せ同居を開始しました。今よりパーキンソン病に関する情報を入手するのが遥かに困難でしたが、まず、ドーンセンターで開催された全国パーキンソン病友の会(JPDA)大阪支部の会合に参加してとても救われました。
※昨年、すぐ創る課で出展したニーズ・シーズマッチング交流会の大阪会場(OMMビル)からドーンセンターはすぐと分かり、感慨深かったです。
それから随分時が立ってから、JPDA奈良支部もでき、病状が進行してきた母と、時折イベントに参加させていただきました。2010年にマイクロソフト社のKinect(version 1)が日本で手に入るようになり、2012年には理事を務めたNPO法人アゴラ音楽クラブの学術研究にも応用しました。
その後2013年頃に、JPDA奈良支部の方に、パーキンソン病に対する理学療法を専門とする畿央大学の岡田先生に引き合わせていただき、当時NAISTの船谷博士や為井博士と共にKinectを用いたパーキンソン病の在宅姿勢リハビリテーションシステムを構築し、ケーススタディの論文
Okada, T., Shibata, T., Tamei, T., et al.
In-Home Posture Evaluation and Visual Feedback Training to Improve Posture with a Kinect-Based System in Parkinson’s Disease
Journal of Novel Physiotherapies, 2014, 4(5), 232, 7 pages
を出版することができました。そして、奈良支部の「まほろば」通信や、全国版会報に成果を情報発信をすることができました。
岡田洋平・柴田智広, パーキンソン病の在宅リハビリテーションのための新しいシステムの有用性について, 全国パーキンソン病友の会会報140, 46-49,2015
図1で示したアプリMedictomeは、市立奈良病院やJPDA奈良支部の幹部の方々に試用していただきながら、現在ではPreferred Roboticsで活躍する近藤博士やMetaで活躍するNgeo博士がNAISTの学生だった時に開発してもらいました。当時このようなシステムを実用化できないか、素人なりにいろいろと動いてみましたが、社会実装は一筋縄ではいかないということを学んで終わりました。しかし、その時の様々な社会経験は、今確かに役立っています。
2023年の現在、画像ベースのトレーニングに関する様々なアプリケーション製品があることはとても素晴らしく、そして感慨深いです。厚労省のリビングラボとして「スマートライフケア共創工房」で支援しているKinectを使った自立支援・モーショントレーニングシステムであるTANOも進化し続けており、国内外の施設への普及が加速することを期待しています。